りゅぷくら

りゅくらちゃんメモ

鬱百合その3

〜あらすじ〜
家族に疎まれて暮らしていたクランは誰かに必要とされたくてたまりませんでした。
そんなある日リュプレさんが懺悔を聞いたりミサを行うために町にやってきました。そこでリュプレさんをみたクランは神様を信仰するようになっていきます。
1週間リュプレさんのミサうんぬんを聞いているうちにリュプレさんがいなくなったら誰に話を聞けばいいのかわからなくなりました。
リュプレさんについていくためには何かしないと話を聞いてもらえないと思い込んで、クランは自らの命を絶とうとして失敗しました。
そんなクランに家族は完全に失望し、クランを置いてどこかへと引っ越してしまいました。

―懺悔するための罪を手に入れたクランは、リュプレさんのところへいってほぼ毎日のように罪を告白し続けました。
そんなクランをみたリュプレさんは、毎日毎日続くそれにあきれ果てていました。
貴方は神に本当に許されたいのですか? リュプレさんはクランについに問いかけました。
クランは答えます。 いいえ、神に許されたいのではなく、あなたに許されたいのです。あなたとこうして会話することで許されているような気持になるのです。
それにリュプレさんは、あくまでも仕事での立場として、義務的に答えました。 貴方が私で救われているのであれば、幸いです。
その口元は呆れで歪んでいました。―この娘は、危ない。

ある日、クランは尋ねました。
―あなたは何か、悩んでいることはありませんか。わたしでよければ、話をききます。いつもの、お礼に。
その心は、わたしがあなたを必要とするように、あなたもわたしが必要になってほしい。―それだけでした。
リュプレさんはそれに答えます。―哀れな子羊を救うことこそが私の使命。貴方の望むままに。
そうして、二人は顔を合わせるようになります。リュプレさんの中のクランに対する苦手意識は消えないまま。

二人はぎこちない会話を続けるようになります。このころには、クランのなかでリュプレさんの存在は大きいものになっていました。
しかしクランは、それが禁忌だとは知りませんでした。この恋心は、同性同士で抱いてはいけないものだと。
それを伝えたけれど、リュプレさんはとても丁寧にこれを断りました。―そのほかで貴方を救える方法はありませんか。
クランはそれに衝撃を受けて、思わず詰め寄ってしまいました。―なぜですか。わたしはこれでしか救われないのに。
そうして、クランはリュプレさんの手を力強く握ってしまいます。そう、たまたま偶然、手袋のなかった、その手に。

「汚らわしいッ!」

勢いよくはねのけられた自分の手に、クランは驚きました。今まで、こんなにも拒絶されたことはなかったからです。
やっと自分と話してくれるひとを見つけたのに、拒絶されてしまいクランは思わず涙を流してしまいました。
リュプレさんはそれを見てあわてますが、しかし拭うことはできませんし、触れることもできません。なぜなら彼女は潔癖症だからです。
すでにこの場から逃げ出して、はやく消毒したくてたまりませんでした。
クランがごめんなさいとすがろうとした手が触れるよりはやく、リュプレさんは走り出してしまいました。

クランはそれから考えます。何がいけなかったのだろう。わたしが触れたから?恋心を打ち明けたから?考えれば考えるほどに深みにはまっていきます。
また懺悔しなくては。
クランは性懲りもなくリュプレさんのところへ会いにいきました。
リュプレさんはあの一件以来、クランのことを避けるようにしていたので、嫌悪感がひどくありました。
懺悔室であの日のことを繰り返し繰り返し謝り続けるクランに、リュプレさんはもう、大丈夫ですから、そんなに謝らないでください。と、ひきつった顔で答えました。
ではわたしとこれからもお話していただけますか?
クランはもう、そのことで頭がいっぱいでした。家族のようにリュプレさんが離れていくことが恐ろしかったのです。
リュプレさんはとても真面目な聖職者でしたので、その言葉を否定することはできませんでした。

同性同士の恋も、触れられることも、気持ち悪くて仕方がないのです。それを表に出すことはできず、リュプレさんはどんどんどんどんストレスをため込んでいきました。
クランはまったくそれに気づきません。何しろ、自分が彼女の心を少しでも軽くできているのだと思い込んでいたからです。
仕事だから、やさしくしてくれているのだとは、微塵も思っていなかったのです。

あるひどい雨の日のことです。クランは誰も集まらない教会の前でひたすらに扉があくのを待っていました。
びしょぬれになった彼女を見つけたリュプレさんは、入れてやらないわけにはいかないと、嫌悪感をこらえながら彼女を招き入れました。
床がクランの服から、肌からしたたりおちるしずくで汚れていきます。
ああ、きもちわるい!
リュプレさんはめまいがしそうでした。それほどまでに彼女は穢れたものが嫌いだったのです。
しかしクランはそれを知りません。リュプレさんに、雨で濡れた、汚れた手で触ってしまいます。

次の瞬間、リュプレさんの中の嫌悪感が頂点に達しました。
気が付けば、叫びながらリュプレさんはクランのことを殴っていました。
濡れた音が教会に響き渡ります。
クランは何をされたのかわからず、床に倒れながら茫然としました。
リュプレさんはやってしまった、ああだけどきもちわるい!きもちわるくてしかたがなかった!と頭のなかがぐちゃぐちゃになっていました。
けれども、振り上げたこぶしを収めることができませんでした。
二度、三度と鈍い音がしました。
クランはぼんやりとした意識の中で思いました。 ―そうか。リュプレさまはずっとわたしをこうしたかったのだ。わたしをこうすることで救われたかったのだ。だからあの日、おしゃべりばかりするわたしの手を払いのけたのだ。ああそうか。そういうことだったのだ。
クランはそれを受け入れることにしました。だって初めから、クランはリュプレさんに必要とされたかったのです。殴られることで必要とされるなら、それを受け入れるのは当たり前だったのです。
リュプレさんはクランがそんな勘違いを起こしているなどつゆ知らず、謝りました。
なぜ謝るのか、クランにはわかりません。だから言いました。―あなたがそうしたいのであれば、いいんですよ。
リュプレさんの口元がまたひきつりました。

クランは教会にまだ通い続けていました。目が合うたびにリュプレさんはいやでいやでしかたありません。ただでさえ、ストレスを抱えていたというのに。
しかしクランはそれでもリュプレさんに話しかけ続けました。けれどたわいない会話ですら、その声に、顔に苛々してしまいます。
あ、と思った時には再びクランの顔に腕を振り下ろしていました。
クランはそれが嬉しくてたまりません。−あぁ、また必要とされているのだ!
ーああ、きもちわるい!
その笑顔だけでリュプレさんはまた腕を振り下ろしたくてたまらなくなりました。けれど神に仕えるものとして、そのような行為が許されるはずもありません。
神様を強く強く信仰している彼女には、それもまたストレスの一因でした。

その日のリュプレさんは、消毒しすぎて擦り切れた手でひたすらに神に懺悔をしていました。

クランはそれでも毎日通いました。彼女はリュプレさんが確かに好きだけれども、同時に神様を強く信仰していたからです。

暴力を振るわれることによって彼女は本当に救われているのか? 暴力を振るうことで彼女は救われているのだ!
このすれ違いが、大きな軋轢を生んでいきます。

リュプレさんはクランを救っているのだという聖職者としての思いと、きたないものに触れてしまっている嫌悪感に悩まされました。
けれども、一度外れた枷はなおりません。あれからも何度となく、クランを殴り続けていました。それがいつしか、汚れるのは手だけで構わないという考えになり、ますますエスカレートしていくことになります。
クランはリュプレさんを救っているのだという思いと、必要とされているという満足感でとても幸せでした。
種族の特性である再生力のおかげで、傷はすぐになおってしまいます。ですから、殴られて殴られて殴られても、まったく平気なのです。痛いよりも、必要とされていることのうれしさが勝ってしまうのです。

次第にリュプレさんの心は摩耗していきました。解放されたい。そう思うようになりました。


ED1
リュプレさんは心がついに壊れて廃人となってしまいます。
クランは最初こそ悲しみはしたものの、すぐに気付きました。
―私がいないと、リュプレさんはなにもできないんだ!
―私が必要なんだ!
その日から、クランはリュプレさんの心身のお世話をするようになりました。毎日毎日、献身的に。
今日もふたりは、しあわせに暮らしています。

ED2
リュプレさんはついに耐え切れずにクランを殺してしまいます。
手袋にしみついた血が皮膚にまでしみこんだようで、リュプレさんは何度も何度も消毒しました。
けれども、いくら消毒しようとも、皮膚が擦り切れて血がしみでても、祈っても、殺した感覚は消えません。
リュプレさんは一生、罪を背負いながら神を信仰し続けるのです。

ED3 
心が消耗しきったリュプレさんはついにクランにこういいます。

「私を救いたいというのならば、殺してくれよ。解放してみせてくれよ」

これこそ、最も私が必要とされている証拠ではないか!
クランは嬉々として、手渡された短剣を受け取ると、リュプレさんの胸に突き立てました。
ああ、これでやっと解放されるのだ。神にも赦しを受けるのだーー
リュプレさんは薄く微笑むと、意識を手放しました。

クランは動かなくなったリュプレさんを見て考えました。
―死んでしまったら、もう必要とされない。
―何でこんな簡単なことに気が付けなかったんだろう!
こんなクランを必要としてくれるものなどいるはずもありません。神も、殺人を犯したクランを許してはくれないでしょう。
クランは考えました。考えて、考えてー
短剣を自分の胸に深く突き刺しました。

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